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Column 技術屋の解説

Column 技術屋の解説

2021.05.14

「第5回」鉄のニオイ

人が思っている鉄のニオイは、鉄や鉄の化合物ではありません。「1-オクテン-3-オン」、「メチルホスフィン」や「ジメチルホスフィン」などの有機物のニオイです。

定義:

『有機物』とは、主に炭素/水素/酸素から構成される物質。燃やすと二酸化炭素が生じる。

『無機物』とは、主に金属元素で構成される物質。燃やしてもほとんど二酸化炭素は生じない。

鉄の融点(液化)は約1540°Cで、沸点(気化)は約2860°Cです。過去に何度か、溶鉱炉(金属を溶かしている炉)で人が大怪我をするなどの痛ましい事故が生じていますが、この炉の温度よりも高温にならなければ鉄は気化しません。

ニオイは、鼻の嗅覚受容体(ニオイセンサー)に物質が付着することがニオイを感じ取りますので、これだけ高温の物質が鼻の中に入れば危険です。時々、「錆びた鉄が徐々に減っている」と言う人がいます。「減る = 気化」と思われているようですが、これは「風化」です。物質(金属)が、酸化などによって粉々に砕ける現象で、気化ではありません。

このように高温でしか気化しない鉄や鉄の化合物は室温では気化しません。では、一体何が気化し、鼻のニオイセンサーに付着しているのか?それは、人の皮脂汚れや空気中に漂う汚れ(有機物)が鉄に付着し、化学反応を起こして上述の3つのような物質が生じます。これらが気化して鼻のニオイセンサーに付着することで、ニオイとして感じ取られます。これが、一般的に「鉄のニオイ」といわれています。

参考:

有機化学美術館・分館『鉄のにおいの正体』より

http://blog.livedoor.jp/route408/archives/50674724.html

有機化学美術館・分館『血のにおいの化合物』より

http://blog.livedoor.jp/route408/archives/52263811.html

“The Two Odors of Iron when Touched or Pickled: (Skin) Carbonyl Compounds and Organophosphines”

Dietmar Glindemann Dr., Andrea Dietrich Prof. Dr. , Hans‐Joachim Staerk Dr. , Peter Kuschk Dr.

Volume45, Issue42, Oct. 27, 2006, Pages 7006-7009

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.200602100

次回担当の7回目では、「防錆皮膜(1回目)」について解説いたします。

【 細 川 】

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