「第4回」身近な防錆技術についてのお話② - 気化性防錆紙(adpack)製造販売|アドコート株式会社
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Column 技術屋の解説

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2021.05.12

「第4回」身近な防錆技術についてのお話②

アドコート(株)技術部の秋山です。

 第4回は引き続き、私たちが普段の生活で使用している金属製品の防錆技術についてお話します。

 今回は「ホーロー」についてです。

 「ホーロー」又は「ほうろう(琺瑯)」は、「七宝焼」と言われる伝統工芸品に使用されている技術で、ガラスを主成分とする釉薬(ゆうやく、うわぐすり)を金属表面に焼き固め、表面に光沢のある色などを付ける技法です。
 現在は素地に金、銀、銅などを使用した物を「七宝焼」と呼び、主に芸術品や美術品に対して使われる呼称となっています。一方、素地に鉄を使用した物を「ホーロー」と呼び、日用品や工業製品に対しての呼称とするのが一般的です。
 身近にある「ホーロー」と言えばキッチン周りのお鍋やケトル、保存容器などがあります。
 その他にも傷つきにくく、対候性も高いことから、建築資材などにも使用されています。
 金属にガラス質の釉薬を塗り焼き固める手法は、最も古いもので紀元前1400年前の物が発掘されています。
 古代エジプトのツタンカーメンのマスクにも「七宝焼」の技術は使用されおり、青色の装飾部分には、ラピスラズリの粉末が焼き付けられていると言われています。
 現在も「七宝焼」を含む陶芸品などの釉薬には天然の原料が使用されており、天然石や灰、鉱物などが用いられています。
 天然原料を用いた「七宝焼」は、その表面のガラスの性質から高い耐久性がありましたが、衝撃による割れ、はがれが生じやすく、素地との密着性が悪いものはすぐにはがれて、防錆効果がなくなってしまいます。
そのため、日用品としての使用に耐えられるものではなく、美しい光沢や、釉薬特有の発色などから美術品としての使用が主でした。
 その「七宝焼」の技術が、現在のような「ホーロー」として実用的な製品に使用され始めたのは、日本では明治時代以降になります。
 その頃にホーロー用鋼板やチタン釉薬の開発などが行われ、鉄との密着性を高めた下塗りと耐摩耗性を高めた上塗りをすることにより、ホーローの防錆性能は飛躍的に向上したと言われています。
ホーロー用鋼板は、鉄鋼中に適度な大きさの金属酸化物などの析出物や介在物を存在させることにより、ガラス層との密着性を向上させています。

 ○「ホーロー」の製造工程
「ホーロー」の製造工程を簡単分けると3ステップあります。
①ガラスを主成分とした釉薬の製造
 ・ガラスなどの成分を溶融し、乾燥後に粉砕して混ぜ合わせる。
・水や糊などで伸ばし、これを釉薬とする。
②素地となる金属製品の製造
・ホーロー用鋼板をプレスなどで成型する。
・脱脂、酸洗い、ニッケル処理、中和処理の表面処理を行う。
③対象金属製品へ釉薬の焼き付け
・釉薬を塗り、乾燥させる。
 ・800~850℃で5~10分で焼成する。
  この操作を繰り返して、釉薬の下塗り、上塗り、絵付けの順に行う。 

○「ホーロー」の特長と欠点
・ホーローの優れた特長
①耐熱性
 耐熱性が高いものでは約500℃の温度にも耐えることができ、日用品ではオーブンなどでの使用も可能です。
②耐酸性
 ガラスは、強い酸に耐えることができるため、工業的には化学薬品の反応槽や配管などに用いられています。
③耐摩耗性
 ガラスの硬度は高く、キズや擦れに対して強い性質があります。そのため、ガラス層のコーティングは摩耗しにくく、素地を長い間保護することができます。 

・ホーローの欠点
①衝撃に弱い
 硬度は高くても延び性に欠けるため、強い衝撃を受けると割れてしまいます。ひび割れや欠けによって素地が露出してしまうと、そこから錆が発生してしまいます。
②大きな熱変化に弱い
 一般的にガラスは急激な熱変化に弱く、急冷や急熱により割れが生じることがあります。 

 「防錆技術」としては、腐食が生じやすい金属に対して腐食が生じない無機物(セラミックなど)を被覆させる、無機ライニングのひとつで、その中でもガラスを被覆させる、「グラスライニング」に分類されます。
 ライニングの防錆性能は、被覆自体の耐食性と被覆と素地の密着性に依存します。
 そのため、防錆を目的とする「ホーロー」は、素地金属とガラス層の密着性を高める、金属の表面処理と、釉薬の密着性能が重要になってきます。 

以上「ホーロー(琺瑯)」に使われている「防錆技術」についてお話しました。

次回は細川の担当になります。

【秋山】 

参考:一般社団法人日本琺瑯工業会 HP

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