第15回/全17回 防錆紙の正しい使い方②
今回は前回に続いて防錆紙の正しい使い方についてお話します。
前回は、防錆紙を使うときにみられる誤りとして、対象金属をしっかりと確認していないことを取り上げました。つぎによくある誤りは、防錆紙と金属との間に介在物があるケースです。防錆紙に使われている防錆剤には気化性がありますが、介在物があると防錆剤は金属表面にまで到達することができなくなってしまいます。
もっとも多いと思われるケースからお話しましょう。
それは包装される金属の洗浄不足です。防錆剤は,金属表面の汚れを取り除いたうえで金属表面に吸着することはありません。汚れの上に吸着するだけです。ですから金属に汚れの付いたままでは、いくら防錆紙で包装したとしても、錆が発生する可能性があります。汚れが腐食性のある物質であったら、確実に錆びるものと覚悟しておかなければいけないでしょう。腐食性のある物質のもっとも身近なものは、作業者の汗や皮脂です。これらが付着したままですと、錆びる可能性が非常に高くなります。防錆紙で包装する前には洗浄が欠かせないのです。
さて、つぎにきちんと洗浄を行っても防錆紙を誤った方法で使うと効果は得られないことをお話しましょう。
極端な例を紹介しましょう。
ポリ袋の中に入っている金属製品に対して防錆紙を使うならば、金属製品をポリ袋から出してラッピングするか、金属製品の入っているポリ袋の中に防錆紙も一緒に入れてあげなければなりません。ポリ袋の外から防錆紙でラッピングしても何の効果も得られないでしょう。
これほど極端ではありませんが、よく見られる例に防錆油が塗られた金属製品を防錆紙でラッピングする場合があります。この場合でも先の極端な例と同じです。防錆油で覆われた金属表面には防錆紙から気化した防錆剤は到達することはできません。塗油された金属表面に防錆剤が作用できるのは、中途半端な塗油で油切れがおきているところだけでしょう。いいかえれば、きちんと防錆油が塗布されている金属に対しては、防錆紙を使ってもさらに効果が上がることはないのです。防錆油と防錆紙の協同作用を安易に期待してはいけません。
しかし,塗油された金属を防錆紙で包装しておくと,それなりの効果がある場合があることも事実です。もしかしたら油切れがおきていたのかもしれませんし,防錆紙が塗油被膜の保護作用をしているのかもしれません。後者の場合ならば,とくべつ防錆紙を使う必要はないでしょう。ケースバイケースで,どんな理由で効果があったのかを検証しないと,無駄なことをやりつづけることになるでしょう。