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Column 技術屋の解説

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2014.02.08

第10回/全17回 防錆フィルムの防錆性能の本質

前回、市販されている鉄鋼用の防錆フィルムの多くには気化性防錆力はほとんどないか、もしあったとしてもかなり小さいことをお話しました。ではそれらの防錆フィルムの防錆性能はどんなメカニズムで生まれてきているのでしょう。

答えを先に言ってしまえば、フィルムそのものがもっている防湿性がもっとも大きく寄与しているといえます。

それに加えて、鉄鋼表面に存在する吸着水に防錆フィルムに含まれている防錆剤が溶け込むことによっても、さびの発生を抑制していると考えています。この作用であれば、防錆剤に気化性は必要ありません。水に溶ける性質があればよいのです。

しかし、けっして吸着水に防錆剤が溶け込む作用を過信してはいけません。

防錆フィルムのベースとなるフィルムには疎水性の性質がありますから、使われる防錆剤にはフィルムになじむように疎水性の性質が必要になります。その上で水に溶ける性質をも持たせることになりますから、防錆剤は何でもよいというわけにはいきません。防錆紙では当たり前のように使われる強力な水溶性の防錆剤をそのまま使うには無理があるでしょう。

さらに、前回もお話しましたように防錆フィルムに含まれている防錆剤はごくわずかで、さらにはフィルムの内部にある防錆剤はフィルムの表面にはなかなか出てきませんから、防錆剤が鉄鋼表面の吸着水に溶け込むとしても、その量はごくごくわずかでしかありません。

つまり、吸着水には強力とはいえない防錆剤が、それもごく微量しか溶け込むことができないということになります。

 昔に経験した試験のことをお話しましょう。

実験室できれいに研磨仕上げした鉄鋼を防錆フィルムで密封包装して、強制的に結露させて錆びさせる試験を行なったことがありました。防湿性のない防錆紙で同じように試験したのでは防錆剤が流れ出てしまい、さびが発生してしまうほどに長い試験期間だったと思います。

防錆フィルムで包装した鉄鋼にはさびが見られませんでしたが、同じ厚さのブランクフィルム(防錆剤を含んでいない通常のフィルム)を用いたものでも、錆びていませんでした。フィルムの高い防湿性によって、さびの発生を防いでいた結果といえるでしょう。

この試験では防錆フィルムの有効性が確認できません。

そこで、密封が不完全な包装を行って結露した水が包装内部に浸入しやすい状況をつくってみました。密封包装のときと同じように強制的に結露させて錆びさせる試験を実施しますと、浸入した水が少量の場合には、防錆フィルムとブランクフィルムとで差が見られるようになりました。しかし、浸入した水が多いと防錆フィルムでも錆びてしまったことを思い出します。防錆フィルムでも錆びたのは、浸入した水に溶け込む防錆剤が十分な量でなかったためだと理解しました。

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