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Column 技術屋の解説

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2014.01.15

第9回/全17回 防錆フィルムの基礎知識―その2

前回は防錆フィルムには塗布タイプのものもあるが,いま市場にあるのは練りこみタイプだけとお話しました。今回も防錆フィルムの基礎的な話を続けましょう。

防錆フィルムは鉄鋼を防錆の対象にしているものがほとんどです。鉄鋼以外の金属を対象としているものも製造されてはいますが,需要は非常に少ないといえるでしょう。そのためか,鉄鋼用の防錆フィルムのパンフレットや技術資料を見ても、あえて「鉄鋼用」とは断ってはおらず、単に「防錆フィルム」といえば鉄鋼を対象にしていることが当然であるかのような内容になっているものがほとんどです。対象金属を明確に示すことは防錆技術にとって基本的な情報ですから、これが欠けていることは誠に遺憾なことです。

また,防錆フィルムメーカーのカタログなどには「気化性防錆フィルム」と書かれているものが多いけれど、これは誤解を招く名称です。防錆フィルムが世の中に出回るずっと昔から使われてきた防錆紙の多くは「気化性防錆紙」とも呼ばれています。この「気化性」を確認するための試験はVIA試験と呼ばれていますが、非常に厳しいものであって、この試験に合格することが、「気化性防錆紙」の条件になっています。しかし、「気化性防錆フィルム」と称している製品のほとんどはこの試験には合格しません。つまり、「防錆フィルム」は「防錆紙」にくらべて気化性防錆力はかなり小さいのです。

防錆フィルムの使用に当たっては、その商品が「気化性」を謳っていたとしても、気化性防錆力は防錆紙よりも劣るおそれがあることを明確に認識したうえで使用しなければならないでしょう。言い換えれば、実際にどれほどの防錆力があるのかの見極めが大切な注意点となります。もちろん『気化性がある』という意味で気化性防錆フィルムと称しても日本語としては間違いではありません。しかし、どの程度の気化性があるのかが問題なのです。

VIA試験を行い、鉄鋼に対する気化性防錆力が実際にどの程度あるのか調べた結果を写真1に示します。調査の対象としたのは市販の練りこみタイプの鉄鋼用防錆フィルム8種(写真のA~H)です。この写真から歴然と分かるように、防錆フィルムでは、いずれも発錆があって試験には不合格です。ちなみに同じ試験を防錆紙で行いますと、錆はまつたく発生しません。ブランク試験(防錆剤がない状態での試験)よりはましな結果を示した約半数は、弱いながらも気化性があるといえるでしょうが、残りのほぼ半数はブランク同じほどにまで錆びていますから、気化性はないと言えるでしょう。これが、防錆フィルムの気化性防錆力の実態なのです。

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