第8回/全17回 防錆フィルムの基礎知識 - 気化性防錆紙(adpack)製造販売|アドコート株式会社
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Column 技術屋の解説

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2013.12.25

第8回/全17回 防錆フィルムの基礎知識

今回からしばらくは防錆フィルムについてお話しましょう。

私は、長年防錆紙メーカーに勤務していましたから、防錆紙についての経験や知識は誰にも引けを取りませんが、それにくらべると防錆フィルムの開発経験は豊富とはいえません。しかし、防錆フィルムの基本的なことがらや、それのもつ本質的な問題点については十分に指摘できます。

防錆フィルムを作り方から分類すると、ポリエチレンなどの樹脂に防錆剤を練りこんだうえで熱をかけ、樹脂を液状にしてフィルム状に押し出してつくられるものと、プラスチックフィルムの表面に接着剤と一緒に防錆剤を塗布してつくられるものに2分されます。現在市販されている防錆フィルムのほとんどは前者の練りこみタイプですが、性能面でみると塗布タイプの良さは無視できないと思っています。

表6に両者の特徴をまとめてみました。塗布タイプは、原理的には防錆紙と同じような防錆剤が使えますから、防錆力の高いものが製造可能です。それに対して、練りこみタイプは製造の過程で樹脂が液状になるほどの高温に晒されますから、その温度に耐えられる防錆剤しか使えません。仮に気化しやすい防錆剤を使ったとすると、防錆剤は製造過程で樹脂から気化して逃げ出してしまい樹脂には残ってくれません。逃げ出さなかったとしても、熱で分解してしまうでしょう。練りこみタイプでは防錆紙で使われるような気化しやすい防錆剤は容易には使えないのです。そのために、防錆力とくに気化性防錆力の高いものをつくることが困難となってしまいます。

塗布タイプの最大の欠点は、製造コストが練りこみタイプよりも高くなってしまうことでしょう。防錆剤を溶かす溶媒と、防錆剤をフィルムにくっつけるための接着剤が、材料として必要になります。この2つは練りこみタイプには要らないものですから、その材料費分がコストアップになります。また、塗布した溶媒を気化させて防錆剤をフィルムに固定するためのエネルギーが必要になります。また、製造技術的なことですが、フィルムの片面に性質のちがう物質を付着させることによってカールし易くなってしまうことも欠点となります。

もう30年近くも昔のことだったと思います。防錆紙と同等の防錆力のある塗布タイプの防錆フィルムが発明されとの情報があり、サンプルを入手して性能を調べたことがありました。防錆紙に引けをとらない防錆性能があったと記憶しています。しかし、この防錆フィルムは普及しませんでした。その原因は価格が高かったためだろうと思っています。

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